「二霊二拍手! 巻之二」
第一話 出会いは突然に
強く生きろよ親父。
それにしても、
「太陽のバカヤロー!」
つい口に出てしまうほどに。
馬鹿みたいな暑さだ。
ちょっと前までじめじめ湿気っていたくせ、くもり空が晴れたかと思いきや連日連夜の日でりつづきでそりゃァ体力も消耗する。
なぜ春がつづかず夏がくるのか。秋も過ぎ去り冬がくるのか。
夏の暑い日と冬の寒い日にくり返される永遠の疑問といえよう。
ああ、ちくしょう、それにしても暑い。
汗の滝がとまらねー。
水分補給しても次から次へとあふれ出てくる。
もうあれだね。
もう死ぬかもしれん。
せめて最後は、師匠の膝枕の上で死にたかったぜ。
「あえか、オレはもう駄目だ」「そんな! 勝手なことを言わないで日和くん!」「無理そうだ。夏の日差しがオレから命の炎を削っていきやがる」「あなたのいない明日なんて、どうやって生きていけばいいの!」「明日は明日の風が吹くさ」「馬鹿! あたしの気持ちも知らないで!」「君の気持ちには気づいていたさ」「最後に抱いて!」「Yes I Do!」
声に出ていた。
危ない危ない。ひとけがない場所でよかったぜ。
たった一人を除いて、な。
くるくる跳ねた巻き毛はオレをみたまま、キュッ、とくちびるの端を曲げる。
アイスキャンディーを口からはなし、
「馬鹿じゃないの?」
「馬鹿じゃねーよ!」
今注目の若手アイドルというふれこみの女は、オレと同じ師匠の弟子の一人だ。同性のよしみってやつか、やたら師匠になれなれしい。一度先輩として忠告せねばならんと思っていた。
「みすず、オレの師匠の半径100メートル以内に近づくな!」
「は? 何言ってんの? 意味わかんない」
ふたたびアイスをくわえて階段を昇っていく。
こういうヤツなのだ。
同門の先輩に対しての敬いというものすらわからんよーな女なのだ!
「待て! 止まれ! 今日という今日はもうゆるさん!」
「いい加減にしてよ。セミよりうるさい声でわめかないでくれる?」
すらりと伸びた足を突きたて、腰に手を当て見下してくる。ダチの志村をたぶらかした脚線美は顕在ってわけか。
「どこみてんのスケベ!」
「なっ、バ、バカヤロー! てめーなんかの体なんかに興味あるかよ! オレは師匠一筋なんだ!」
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