「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

 美鈴がこわごわ、様子の変わったあえかに尋ねる。
「あえかさん、ですよね」
「ん。うふふ。どう思う?」
 楽しそうな顔を浮かべて美鈴を見るあえか。
「あの、あたしのせいで、その、鏡を割っちゃってご免なさい」
 精一杯に頭を下げる美鈴に、あえかは不可思議な笑みを浮かべる。
「うふふ。お手柄だよ。なんたって、わらわの封印を解いたのだから」
「え?」
 訳も分からず目をしばたかせる美鈴。
「そうだ。ご褒美をあげないとね」
 手招きするあえか。
「おいで」
 無防備に近づいていく美鈴。
 近くまで来た美鈴はあえかを見上げた。女性にしては高い身長のあえかは、美鈴よりもずっと背が高い。女性の目から見ても見惚れるほどのスタイルを、女優を目指す美鈴は羨ましいと思っていた。
 その顎がくいと持ち上げられる。
 ごく自然な動作で、あえかは美鈴の唇に自分の唇を当てた。
 パリン。
 日和が見つけた鏡を取り落とす。
 大沢木が誰かに殴られたかのようにぐらついて地面に手をついた。
 金剛。無感動。
「最高のご褒美だよ」
 唇を放したあえかは、美鈴に言った。
「あえかお姉様」
 お姉様!?
 大沢木と同じように日和も地面に手をつく。
「師匠のファーストキスはオレが奪う手はずだったのに……」
「美鈴……おまえには目の前にいる男の姿が見えないのか……」
 二人して思い思いに心の中身を吐露しなければならないほどに落ち込んでいる。
「ふむ。これがいわゆるれずびあん」
 金剛は興味深げに見つめ合う二人を見ている。
「うふふ。まだ生娘じゃないか。おいしそうな子――うぐっ!」
 苦しそうにあえかが呻く。
「お姉様!?」
「「お姉様って!?」」
 日和と大沢木が同時に同じ言葉を口にだす。
「駄目だ! そんなのはゆるさん!! 人間として間違っている! 女は男と付き合うもんじゃァ!!」
「そうだぜ日和!! おまえは正しい! それが未来のこの国を豊かにしていくんだ!!」



Copyright (C) 2009 Sesyuu Fujta All rights reserved.