「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

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 目を覚ます。
「ふっ。夢か」
「日和っ」
 がばっ、と首に巻き付いてくる柔らかい腕。
「よかった。よかったよー」
 美鈴がわんわん泣きながら抱きついている。
「あれ? ここは?」
 見晴らし良い光景が広がっている。あれに見えるは水蛭子山。昔々に恵比寿様が辿り着いたと伝承がある。すでに辺りは暗くなっていた。
「これで全員ですね」
 あえか様がにこりと微笑む。いっちゃんに金剛のオッサン、あと首に巻き付いている美鈴。
「コラ何すんだはなれろ!!」
 あえか様に誤解を与えちまうだろうが!!
「な、なによー!!」
 涙をぬぐいながら恨めしそうに日和を見上げる美鈴。
 どきん。
「やはり心臓に病が」
 あくまで認めたくなかった。
 その頭をぺんぺん、と叩くイタチがいる。
「おどれ、目ぇ覚ますのおそすぎるんとちゃうんかい? もうちょっとで嬢にどつき回されるとこやってんぞ?」
 板吉がさも怖ろしげにあえか様を見上げ、ぶるぶると器用に体を震わせる。
 動物のくせに、本当に人間くさい奴だな。
「師匠、オレのことを心配して……」
「貴方には特別な特訓が待っていますから」
 にっこりと笑うあえか様。その壮絶な微笑みが素敵だ。
「ワイ等がきちん、とお勤め果たしましたよってに、ほな、これで」
「待ちなさい」
 立ち去ろうとした4つの獣の背中に、あえかが声で威圧する。
「いつ、誰が、自由にするといいましたか?」
「え? えーと、たぶん」
「いやどすえ。ついさっき嬢が言ったじゃありやせんか」
「そ、そうだで。もう一人の嬢が」
「そうゲロそうゲロ」
 四匹とも、口を揃えて頷きあう。
 ああ、なんか必死だ。
「なっ――そ、それは本当ですか?」
 金剛を見る。



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