「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

「これは――」
 四匹の魔物が神父をみて、嫌味たらしい笑みを浮かべた。
「魔物どもが!! 我が神は云われた!! あ――」

 

ピーヒャラピーヒャラドンドンドンチンチン!!



 また声が消される。
「くっ、あの怪物ども!!」
 神父が目を向けた場所へ、すらりと肢体をなびかせてあえかが行く手を塞ぐ。
「下郎、相手をせい」
「いい気になるなよ」
 溝口は聖書を服のポケットにしまうと、腰だめに構えをとり、距離をとりつつ隙をうかがった。
 一歩踏み込み、持ち上げた膝から鋭いつま先の刃が放たれる。
 あえかはそれを打ち払った。
 弾かれた反動を利用し、もう片方の足が逆方向から下段を狙う。
 一歩引いて避けるあえか。
 地に手をつき、回転をくわえながら大きく両足を振り回す。
 欠伸をしながら避けられた。
「くっ」
 足を縮め、バネのように跳ね上がって顔を狙う。
 パシッ、と掴まれた。
「つまらぬ」
 一言。
 防御できない腹部へ、光り輝く拳を叩き込む。
「――ッ!!」
 横倒しになったまま、神父は地面とぶつかった。苦しそうな声を出しながら、みぞおちを押さえて悶え苦しむ。目を一杯に見開き、口から大量の吐瀉物がこぼれた。
「ぐえ」
 美鈴は思わず日和の背中で目を覆う。
「なんじゃ。その様は。まだわらわにかすりもしておらぬではないか」
 あえかは神父服の襟を掴み、軽々と持ち上げて無理矢理立たせた。
「ほれ。今一度踊り狂うてみい」
 ハァ…ハァ…。
 溝口は口元をぬぐうと、ぐらりとよろめいて膝をついた。
現世(うつよ)の男はもろいの」
「……返す言葉も、ありませんね」
 帽子を脱ぎ捨て、腹筋に力を込める。
「神よ、感謝致します。これほどの試練」
 神父服を脱ぎ捨て、シャツ一枚になる。
 引き締まった筋肉で前へと踏み込む。



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