「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

 イタチがどこからか、当たり(がね)をとりだすと、ちぃん、と一振りキセルをぶつけた。
「あった! ありました!」
 日和が鈴がブドウのように連なった金色の鈴――神楽鈴を探し当てた。
「よくやった! お渡し!」
「させませんよ」
 日和の前に、黒い神父が立ちふさがる。
「ひぃぃぃぃい!!」
「まかせい!!」
 その背後に巨大な影が立ち、むんずと神父の両腕を捉えた。
 金剛はそのまま、万力のように締め付ける。
「この、死に損ないが!」
「師匠!!」
 リュックを外して身軽になった日和は、二人の横を通り過ぎて、師匠に向かって神楽鈴を投げた。
 ぱしっ、と手にするあえか。
「もう一つ!」
「え!? もう一つ!?」
 神楽鈴は二つで一つだ。
 日和は戻って捜し始める。
「まだ神は、我を見捨てず」
 神父は足を浮かせ、大男の拘束を解くために背後に向けて思い切り踵を蹴り上げた。
「うっほう!!」
 急所の直撃に金剛の腕の力が弱まる。
「お、おのれ、唯一強化できないところを……」
 神父はその脇腹に蹴りを入れた。ずぅむ、と倒れる金剛。
「あった!!」
 日和がもう一つの神楽鈴を見つけた。
 振り返ると、また神父が目の前にいる。
「げっ!!」
「遊びは終わりです」
 パラリと聖書を開く。
「小僧!!」
 その脇を、あえかが横切った。
「もらうぞ!!」
「しまった!」
 神楽鈴を二つ手にしたあえかは、高慢な表情に会心の笑みを浮かべた。




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