「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

 神父が舌を打つ。術が完全ではなかったか。
「よそ見すんなジジイ!」
 大沢木は射程圏内まで踏み込むと、手を鈎爪のように固めて振るった。
 音速の刃が地を這うように襲いかかる。
「神は云われた。我を何者も傷つけることはかなわぬ」
 キュィン、という耳障りな音だけが響く。
 大沢木は走ることをやめない。
 彼は拳をにぎると、これが真骨頂だと云わんばかりに大振りに撃ちこんだ。
 神父の帽子が宙を舞う。
「――ごォ」
 地に手をつき、大沢木の一撃を躱した神父の左足が、カウンター気味に大沢木の横面にクリーンヒットする。
 重い衝撃に倒れていく学生服の首筋に、彼は振り切った足を器用に回転させ、踵を叩き込んだ。
 カウンターから踵落としのコンビネーション。
 ぐぅの音も出ず、地面へと伏す大沢木。
 神父は足を地につけると、「フゥ」と息を吐いた。
「終わりですか?」
 ぼろぼろになった三人の”総社”に向け、余裕の笑みを浮かべた。




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