「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

 うなづく――とおもいきや、ぶるんぶるんと首を振った。
「まだ死ぬのはいやーーーー!!」
 彼の人生はまだ長いのだった。
 金剛は呆れた。
「それじゃ留守番しておれ」
「それもいやーーーー!!」
「ではどうする?」
「日和」
 大沢木は日和に向けて言った。
「おまえは、他人を見捨てて逃げるようなたまじゃねえよな」
「…………」
 親友の真面目な表情に、日和の心の中で壮絶な二つのせめぎ合いが繰り広げられた。
 当然のように期待に満ちた目の大沢木。
 立ち上がる日和。
「おうともさ! オレはやるぜ! 美鈴を救い出し、そして――逃げる!!」
「そう――え、逃げる、の?」
 自信満々だった大沢木の表情が崩れた。
「ああ! 地の果てまでも全力ダッシュで逃げるさ!」
 せめぎ合いの結果、ちょうど真ん中くらいで折り合いをつけた。
 大沢木は師と金剛を見た。
 目が泳ぎまくっている。
「……まぁ、戦う以外に使い道はあるという事じゃな」
 あえかはため息だけを残す。
「だって、オレノーマルだもん! 普通人だもん!」
 日和は泣いていた。
「春日君。この件が終わったら、しっかりと修業をしましょうね。主に、精神面の」
 生き残っても大して変わりなさそうだった。




Copyright (C) 2009 Sesyuu Fujta All rights reserved.