「二霊二拍手!」
第五話 ヤミヨミの神父
東は姉を見上げ、少しだけ優しげに声をかけた。
「後悔なんて、していないんだ」
「その身は――すでに魔性と化していましたか」
「神のキセキさ」
正龍は皮肉に笑った。
「久しぶりに自分の足で立てた。短い間だったけどね。君たちには考えられないかも知れないけど、これが、僕の欲しかったすべてだ」
「――意識があるなら、好都合です。そのままの貴方を持ち帰ります」
「無理だな。だって――」
東の顔が、地面に近い場所から崩れ、細かい砂となっていく。
「この身体は、土くれだ」
「龍!」
姉は崩れていく頭を胸に抱いた。
「心配いらない。人はすべて土に返る」
「なぜ、ナゼこんな事――」
「最初から決められている人生を、認めたくなかった。抗えるなら抗って、自分で未来を掴みたかった。――なんてね、結局、僕は自分の宿世から逃げられなかったみたいだ」
腕も、足も、胴体も、何もかも細かい砂となって、風に吹かれて夜の向こうへ消えていく。
「ご免。姉さん。僕は我が儘だ――」
すべてが砂と化し、風とともに言葉まで奪っていった。
あえかは手を合わせた。
もはや何もなくなってしまった場所に向け、祝詞を唱える。
「高天原に神留坐す神魯岐神魯美の詔以て――」
風が、静かな奏上の詩を、死者の元へと運んでいった。
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