「二二拍手

第四話 式神演舞

「さらに神は云いけり。汝、八つ裂きの刑に処す、と」
 火に包まれた体は、紙切れのように分断され、その一つ一つが消し炭となって風に吹かれて消え去った。
「すげぇ!」
 日和の言葉に淡く微笑み、神父は倒れている東の体を小脇に抱え、日和たちのほうへと近づいてくる。
「すげぇ! 師匠の次くらいにすげえ!」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ」
 興奮気味な二人に頭を下げると、美鈴に向かって手を差し伸べる。
「では行きましょうか」
「え?」
 美鈴がきょとんとし、日和も同じ顔をする。
「ああ、この前名乗るのを忘れていましたか。これは失礼を」
 神父は会釈をすると、自分の名前を名乗った。
「ワタシは”組織”の終端者(デリミタ)。”ヤミヨミの神父”お呼ばれている者です。以後、お見知りおきを」
「はぁ」
 日和と美鈴は互いに顔を見合わせ訳がわからない、という顔を浮べた。
「ふむ。てっきり”総社”の人間であると踏んでいましたが、その様子では、まだ知らされていないようですね」
「そ、それより神父様、早いトコ、いっちゃんを病院に連れてきたんだ! もう帰ってもいいかな!?」
 切迫した日和に、神父は穏やかに首を振った。
「いいえ」
「いいえって!?」
「美鈴さん、こちらへ。ワタシは、貴方を迎えにきました。東君は、ワタシの部下です」
 その言葉に、つばを飲み込む二人。
「おとなしくついてきていただけますよね?」
 紳士的に振舞ってはいるが、有無を言わせぬ口調だった。
 美鈴は日和を見た。
「ふっざけんなオッサン! いきなり出てきて女子高生に誘いをかけるなんざロリ――」
「汝、動くなかれ」
 聖書を開いた神父は、日和に向けて告げた。
 コ、の口をあけて、日和が動きを止める。
「さて。これでわかりましたか?」
 美鈴はまるで石造のようになってしまった日和の背中にすがりついた。
「無駄ですよ。彼は今、呼吸すらしていない。このままでは窒息死してしまうでしょう。ここ、つまり脳にすら酸素が届いていない。早くしないと細胞が壊死を起こして記憶障害になる」
「日和を元に戻して!」



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