「二二拍手

第四話 式神演舞

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「長い一日だった」
 日和はそう言うと、ペンダントを握りしめてふん! 鼻息を噴いた。
「春日日和。今貴女の元へ――」
「ヒヨリ、忘れてるぞ」
 志村から声がかかり、日和は首を巡らせた。
「何が?」
「古文の授業、おまえ寝てたろ? 補習だってよ。おまえだけ」
「なんだとぅお!?」
「……オレにキレずに自分にキレろよ。起きなかったおまえが悪いんだ」
 日和はペンダントを握りしめ、血の涙を溢れださんばかりに号泣する。
「そんな馬鹿なあああああ!!!!」
 ひとしきり叫んだ日和は、何か一つ物足りなさを感じて志村に聞いた。
「なぁ、何かオレ、忘れてなかったっけ?」
「おまえの物忘れはいつものことじゃん」
「いやいや。冗談じゃなくマジで」
 日和は気づいた。
「そういや委員長は?」
 いつもならこういう状況で一番に馬鹿にしてくる奴がない。
「お前、気づくの遅すぎ……」
 志村は三時限目以降、委員長が保健室へ行ってから戻っていないこと、その後内山が半殺しの状態で発見され救急車で運ばれこと、しかもとある情報筋(=御堂)からそのことをまったく覚えていなかったなどと証言を得たこと、さらにはその犯人が委員長で実は暗殺武術の達人ではないかと噂が立っていることを日和に伝えた。
「暗殺武術……」
 日和はそこに気をとられた。
「ああ、あれは間違いなく、中国四千年とかがからんでいるぜ」
「怖ろしいな」
「暫く委員長には逆らわないほうがいいな」
 日和は友人の忠告に耳を傾けると、古文教師兼担任の溝口にあうため職員室へ向かった。




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