「二二拍手

第四話 式神演舞

「今日の放課後、時間ないかな?」
 話しかけられた美鈴は、肩を振わせて車椅子の少年を見下ろした。
「今日、放課後。委員会とかじゃなく、個人的な用で会いたいんだ」
 いつものように愛想の良い笑みを浮かべ、美鈴の言葉を持っている。
「あの、今日も用事が――」
「一〇分くらいで終わるよ」
 東は引かないつもりのようだった。
「……わかり、ました」
 他に断わるすべを知らない美鈴は、仕方なく頷いた。
「よかった。それじゃ、授業が終わったあと裏庭まで来てくれるかな」
 チン、と音が響き、校舎の三階へエレベータが着いた。
「それじゃ、待ってるよ」
 そう言うと、東は美鈴の表情もみずに教室へと向かっていった。
 美鈴はエレベータから降りたあと、鳴り響くチャイムの音を聞きながら、とても憂鬱な気分で教室へ向かった。




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