「二二拍手

第四話 式神演舞

「その、よければね、あの、学校まで、乗せてってくれない?」
「何!?」
 日和は驚いて一歩下がり、あえかにもらったペンダントをつきだして叫んだ。
「悪霊退散!!」
「だから憑かれてないって!!」
「知ってるぞ! 悪霊はそうやってウソをつくんだ。そして油断したところを頭からがぶりと!」
「あーもう、どこまで馬鹿なの!?」
「なにをぅ! 馬鹿ってゆーな!」
 朝っぱらから元気に怒鳴り合う月代高校の生徒を、一般生徒や一般人が関わり合わないように遠巻きに回避していく。
「本物だというなら証明してみろ!」
「一学期の中間テスト。数学の成績15点」
 ガーン! と日和が固まる。
「な、なぜそれを」
「古文23点」
 がーん!
「科学16点」
 がーん!
「地理8点」
 ががーん!
「保健体育98点」
「まーな」
 そこだけ偉そうに日和はフフフと笑う。
「英語」
「まて! それを言うな! それだけは言うな!」
 くずおれる日和に向けて眼鏡を閃かせ、委員長は「ふふん」と鼻を高くする。
「親にもバラしたことないのに……」
「……それは駄目じゃない」
「オレの家ではまだ中間テストは始まってもいないんだよ」
「そぉ? でも、おばさまから聞いたんだけど」
「何! あのババア! 一家の秘密をよりによって美鈴なんかにばらすなんざ――」
 日和は考え、うなだれた。
「あのババアならやりかねん」
「テスト用紙を隠すだけじゃ駄目みたいね」
「くそー、どおりで今月の小遣い少ないと思ったんだ」
「隠すあんたが悪いの」
 美鈴はそう言うと、日和の腕を引きずって自転車に座らせる。
「それじゃ、お願い運転手さん」
「……くそ、この借りは絶対ぇ返す」
 じゃりじゃりんっ、とベルを鳴らしながら日和は自家用車の後ろに客を乗せ、学校までの路を急いだ。




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