「二二拍手

第四話 式神演舞

「みすずおまえ、師匠を困らせるなよ!」
「春日君は黙っていなさい」
 なぜ?
 かばったはずの人物から叱咤され、日和は元気が抜けたように肩を落とした。
 慰める大沢木。
「……わかりました」
 あえかは自分が折れると、日和と大沢木を見て告げた。
「このみすずさん以外にも、貴方のクラスにも狙われている人物がいます。その()も守のです。あなた方二人で」
「俺もかよ」
 めんどくさそうな顔をする大沢木に、あえかは大きく頷いた。
「その子はきっと、貴方たちがよく知る人物です」
 みすずは涙ぐんでいた。
 あえてそれを無視し、あえかは日和に向けて懐に手を差し込む。
 日和の鼻息が荒くなる。
「これを持ちなさい」
 手渡された冷たい金属の重さに、あからさまな落胆の表情を示し、急上昇したテンションが一気に急下降してマイナスへと落ち込んだ。
 無骨な鎖がじゃらりとついた、小型のペンダントだった。つるりとした表面が光を反射して鈍色に輝いている。
「それを貴方に授けます」
「……師匠、オレのやる気をあげるならもっと別のもののほうが――」
「それを貴方に授けます」
 二回言われたので日和は渋々ポケットへと入れた。三回目には拳が飛んでくる。
「わたしからの贈り物です。肌身離さず身につけておきなさい」
 下がっていたテンションが跳ね上がって雲を突き抜け天国へ入った。
「はい! オレ一生大事にするっす!」
 あえかは微笑みを浮かべると、ぱんぱん!と手を叩いた。
「それでは今日の修練を始めましょう」




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