「二霊二拍手!」
第四話 式神演舞
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「みすずさんを泣かせましたね」
道場へ帰ってくるなりあえかの冷たい眼差しが出迎えた。
「すげぇ。オレ今日おみくじ引くと間違いなく大凶だよ絶対」
日和は独り言を呟くと、疑いを晴らすためあったことをすべてありのままに伝えた。
「そうですか。そんなことが……」
あえかは話を聞き、黙ってしまった。
せめて謝ってからにして欲しいと、日和は思った。
大沢木は長時間の正座のせいか、床に倒れて虫の息を吐いていた。さすがの喧嘩百段も正座という魔物には勝てなかったとみえる。うんうんと唸りながら、たまに床の上をごろごろと転がる。ああすると、気が紛れて少しだけ気分が楽になることを、日和も実体験から知っていた。
「みすずさん、それは」
泣き疲れたのと叩き疲れたせいでぐったりしたみすずに近寄り、茶色の髪に巻き付いていた紙片をすき落とす。
「紙っすね」
尋ねてくる日和に、あえかは黙って顔の前にかざしてじっくりと眺める。
日和、みすずに見つめられながら、あえかは四角い紙切れを床に置いた。
小さな紙切れは、触れてもいないのに意志を持つかのように動くと、かすかな早さで東南の方角へと引きずられ始める。
「呪がかかっています」
あえかは呟くと、道場の端に設置したロッカーから紫色のふくさを取り出し、戻ってくると、ほんの少し進んでいた紙を広げたふくさの上に置き、柔らかく包んで結びを締めた。
「大事な証拠です」
不思議な顔をしている弟子たちに、説明する。
「証拠?」
「ええ。私たちの――敵の」
「敵?」
「みすずさんを襲った者のことです」
みすずは不安そうな顔で自分の師匠を見あげた。
「どうやら本格的に仕掛けてきたようですね」
あえかが居住まいをただすと、日和とみすずもその迫力に押されて姿勢を正した。
「大沢木君、貴方も此方へ」
床の上で呻きながらも、大沢木は這いずってやってきた。
「せ、正座は、勘弁してくれ」
「……あぐらでかまいません」
初めてついて出た大沢木の弱気に、日和はやっぱあれって拷問だよな、と確信する。
「以前、春日君は追われていたみすずさんを助けたことがありましたね」
「あの妙な影のことっすか?」
美倉みすずとは知らず、追われている彼女をかくまおうと町内中を駆け回ったときのことだ。結局のところ、たまたま買い物帰りのあえかに助けられて難を逃れた。
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