「二二拍手

第四話 式神演舞

 日和は親の夫婦ゲンカを思い出し、凄惨な現場を思い出す。
「ううっ」
 気分が悪くなった。
「つーか、誰だ! 師匠のお膝元で暴れたりすると、仕返しが怖いぞ!」
 半殺しにするまで笑顔で殴りつけてくるあえかを思い出し、日和はぶるぶると震えた。
「怖いぞ! ホントに怖いんだぞ!」
 なぜか泣いていた。
 彼がそう言ったせいかどうかは分からないが、桜の猛襲はふいにピタリ、とやんだ。
 二人が周りを見渡すと、桜の花などどこにもなく、青々と葉を茂げらせた樹木が静かに風に揺れている。気ままな雀が地面から飛び立ち、木の上でちちち、と唄を歌い始めた。
 元の境内に戻っている。
「夢か」
 ふー、と日和は息をついた。
「ゆ、夢なわけないじゃない!」
 みすずは日和にくってかかると、赤い目をしてポカポカとその頭を叩いた。
「な、なにすんだ! つーかなぜオレを殴る!」
「もう嫌だよぅ! 何でわたしばっかりこんな目に遭うのよぅ! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」
「おまえそれ八つ当たりじゃねえか!!」
 日和はそれでもみすずがおとなしくなるまで叩かれ続けた。
 そのみすずの髪の上には、白い紙切れが一切れ、張り付いていた。




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