「二二拍手

第四話 式神演舞

 …………。
 日和はガクリと膝をついた。
「……誘導尋問にひっかかってしまった」
「何をすればよいか分かっていますね?」
 にこりと笑う。
 日和は大沢木の隣でまったく同じように正座した。
「ひーちゃん、俺、たまにお前のことがかわいそうでたまらなくなる」
「いっちゃん、男には避けては通れない道ってのがあるんだ」
「私語はしない」
 日和と大沢木は無言で耐久レースを再開する。
「今日はみすずさんのみを修練させることにします。貴方たちは終わるまでその態勢でいなさい」
「くっ」
 大沢木がブチ切れる寸前の顔で師匠を睨む。
「『真心錬気道』をまともに学びたいなら、今日一日その態勢で我慢なさい」
「ぐぐぐぐぐぐ!」
 何をそんなに頑張っているのか、大沢木は珍しく文句を言わずに言うことを聞く。
「こんにちわー」
 みすずの声がする。
「いらっしゃいみすずさん」
 師匠が声をかけても、いつもの軽いノリの返事は返ってこず、あからさまな意気消沈オーラを発しながら道場に入ってきた。ちなみに彼女は母屋のあえかの私室を使って道着へと着替える。
「どうかしましたか?」
 心配そうに、あえかはみすずに声をかけた。
「あっ、いえ、なんでもないです……」
 なんでもなくないような返事をして、大沢木と日和に並んで自分も正座する。
「あの、みすずさんはそこに座らなくても良いですよ?」
「え?」
 みすずはマスカラをつけた目をパチクリさせて二人を見た。
「彼らは罰としてそこで正座しているだけですから」
「いや、師匠。こうなれば一蓮托生三人一致で責任をとるという方向でどうでしょうか?」
「なにがどうなのですか? みすずさんは貴方たちと違います」
 みすずの肩がびくっ、と震えた。
「……わたし、特別なんかじゃないですっ」
 あえかはみすずの強い口調に戸惑ったような表情を浮かべた。
「みんなと同じでいいです!」
「みすず、おまえ、何か変だぞ」
 反撃を予期していた日和も、自分の意見がこうも素直に受けいられたことにそこはかとなく不安を感じて尋ねる。



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