「二二拍手

三話 旧校舎の妖怪おどろ

「あれ? はずした!」
「…………」
 あえかは大沢木の様子を見て、唇をかみしめると、追いかけることをやめた。
「春日君。起きなさい」
 自分の弟子を少し乱暴に揺すって起こす。
「む、あ」
 何かとても幸せそうな顔で眠りこける日和。
「う〜ん」と言って、先に目を覚ましたのはみすずだった。
「う〜ん、重い。…何? 誰? きゃ――きゃあああああああああああああ!!」
 ばちんっ、と盛大に紅葉の花が咲く。
「ぐはっ! いてぇ! なんだ! 誰が風船を爆破させた!?」
 日和は起き上がると、目の前にある物をにぎってフー、と息を吐いた。
「なんだ。あるじゃんフウセン」
「変態! 強姦魔! レイプ犯! 変質者! 色情狂!」
 みすずは散々怒って日和を叩いた。
「いてっ! なんだ? なんで怒ってんだ? オレが何かしたか?」
 あえかの方を向くと、呆れたような嘆息がかえってきた。
 大沢木の方を向くと、手を挙げて「謝れ」と言ってくる。
「オレのせい? オレのせいなのか!?」
「変態! 変態! 変態!」
「くそー、オレ、精一杯やったのに」
 日和は土下座までしてみすずに謝った。
「片が付いたみたいっすね。師匠」
 足を頭に乗せられて額を床に押しつけられながら、日和はあえかに尋ねた。
「いえ」
 あえかは短く、言った。
「終わっては、いません」
 神父が消えた戸口を睨み付ける。
 日和は自分が眠っている間に何があったのだろうと、がんっがんっとみすずに足蹴にされながら不思議に思った。




Copyright (C) 2009 Sesyuu Fujta All rights reserved.