「二二拍手

三話 旧校舎の妖怪おどろ

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「んがっ!?」
 自分の空いびきに驚いて日和は目を覚ました。
 真ん前にに、蒼白い無精ひげの顔が現われる。
「悪霊退散ナンマダブエロイエロイレバサバクタニナムアミダブツシキソクゼクーマーリマリオンフーカライデン臨!兵!闘!者!皆!陣!列!在!前!むひょー!!」
「何をしとる」
 溝口は自分の生徒に向けて哀れみを込めた目を向けた。
「はっ! ここは誰? ワタシはどこ?」
「ここは旧校舎だ。お前はここにいるだろう」
 タバコのような細い葉巻を加えた溝口は、その火を壁に押しつけて消した。甘ったるい臭いがあたりに立ちこめている。
 心地良い香りだ、とぼんやりする頭で日和は思った。
「どうせ寝るなら、おれの部屋に来い。布団くらいは貸してやろう」
 そう言うと、白衣(はくい)を引きずって歩きだした。




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