「二二拍手

三話 旧校舎の妖怪おどろ

 黒いカーテンで仕切られたここがどこなのか、よくわからなかった。また準備室の類だろうか。こんなことなら、旧校舎の地図をナミヘイからぶんどっておけば良かったと、ひどく後悔する。
 立ち上がった彼は、奇妙な臭いが部屋に充満していることに気づいた。
 臭いの元を辿ると、壁にくっついた机の上の白いトレイに、なみなみと液体が入っている。近くには巨大なピンセットがおいてあり、フィルムみたいな束が巻かれておかれている。
 壁に目を向けると、貼り付けられた複数の写真の中から、一枚の写真に目が引き込まれた。
 少女が笑っている。師匠と同じ黒髪ロングヘアで、師匠よりも面差しが優しい。制服を着ているということは、この学校の生徒なのだろうか。瓜実型で色の白い、声をかけられて少し照れているように、窓辺から此方を振り返って笑っていた。
「むぅ……美人だ」
 思わず呟いてしまう日和。特に師匠と同じ和服が似合いそうなところがポイント高い。
「ありがとう」
 日和は写真の中の少女が声をかけてきたような気がした。




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