「二二拍手

三話 旧校舎の妖怪おどろ

「あー! くそ! あのナミヘイ! オレのあえか様になんつーことを!」
 飛び出した日和は、七福神の顔を無理矢理押しのけ、あえかの前に割り込んだ。
「な、何をする!」
「師匠はオレのモンだ! 妻子持ちはすっこんでろ!
「き、貴様! 先生に向かってなんという暴言を!」
「センコーが怖くて師匠の元に通えるかってんだ!!」
「春日君、落ち着きなさい」
 日和を押しのけ、間合いをキープしたあえかは、少しほっとしながらも冷静に言った。
「わかりました。急ぎのご様子でしたら、今から出張させて頂きます」
「助かります」
 頭を下げた校長は、日和に向けて鋭い視線を放つ。
 負けずと睨みかえす日和。
 男同士の醜い火花が散る。
「醜いわ」
「そうだな」
 みすずと大沢木がはじめてあった意見に頷き合う。
「それでは仕方がありません。今日の修練は中止にして――」
「師匠! それには及びません!」
 日和はビシッ、と親指で自分をさし、カッコイイと思い込んでいるナナメ45度の顔向きでアピールした。
「オレに荷物持ち、やらせてください!」
「なんと!」
 バチバチバチ、と校長と日和の視線が交錯する。互いに何を思っているかは一目瞭然だった。
「醜すぎる」
「そうだな」
「わかりました。ではみすずさんと大沢木君はこれで――」
「あたしたちも是非、お師匠様のお祓いぶりを見てみたいと思います!」
 天をつくようなきれいな挙手をしたみすずは、日和に向けて、皮肉な笑みを浮かべる。
「何をぅ!? こしゃくな小娘!!」
「だってぇ、あたしたちもそろそろ実践を目にしたいと思うんですぅ。そうよね、大沢木君?」
「どっちでもいいよ俺は」
 興味なさそうな相棒に、みすずは片腕をとって強制的に上げさせた。
「大沢木くんもやる気十分です!!」
「……そんなことやって楽しいのか? おまえ」
 冷静な大沢木の声を笑顔で無視して、あえかの答えを待った。
「わかりました。では、皆でゆくとしましょう」
「「ええっ!?」」
 日和と校長が愕然と声を上げる。
「何か?」
 その顔に微笑むあえか。
「やったー!」
 はしゃぐみすず。
 大沢木はつまらなそうに外を見て、あ、鴉だ。と思った。




Copyright (C) 2009 Sesyuu Fujta All rights reserved.