「二霊二拍手！」
二話 狂犬騒乱
|
/ １６ / 夕暮れ。 定員割れを繰り返し、廃校となり果てた中学校の教室。「２−C」と黄色く変色した表札のかかる埃だらけの部屋の中で、日和は縄でくくられて転がっていた。 「……来ないねえ」 少年は教壇に座り、足をぷらぷらと遊ばせながらつまらなそうに呟いた。 「見捨てられちゃった？」 日和は少年を睨み付けた。 「どうしようかな。タイムリミットは日没までってのが、よくあるシチュエーションなんだけど」 その片手には、本物の銃がぶら下がっている。 「ちゃんと手紙も出してきたのにさ」 「見てねーんじゃねーの？」 日和は突っかかるように言った。 「見てないかー。それだとお兄さん、ご愁傷様」 「何がだよ」 「代わり」 と言って、少年は日和に銃口を向ける。 「じょ、冗談だよな」 「うん、半分冗談」 「よかった。……って半分！？」 「だってつまらないんだもん。憂さ晴らししたいな」 「まぁ、待て。落ち着こう、な、ボク」 日和は少年から離れようと、もぞもぞと足を使った。 「あはは！ お兄サン、ヘタレー！」 「ヘタレで悪いか！ 俺はまだこんなところで死にとうない！」 少年は銃口をおろした。 「わざわざ果たし状まで書いたんだ。ほら、見て見て」 最前列の机の上に置いてある書道道具一式から、文字の書かれた半紙を取りあげる。 ”今夜七時。晴嵐中学にて待つ。” 達筆だ。跳びも跳ねも完璧だった。 ミミズの軌跡のような日和のノートとは次元が違った。 「これを、こうして……」 と言って、少年はポケットから堅そうな石を取り出すと、『果たし状』でくるむ。 「こう、と」 力一杯に、窓ガラスに向けて投げつける。 甲高い音が誰もいない学校に響き、『果たし状』は夕焼けのグランドへと飛び出していく。 「おまえ！ まさか！」 「十枚くらい書いたからさ、アイツの家突き止めて投げ込んでおいた。どこにいてもわかるように、全部の窓に向けてね」 
|
