「二二拍手

二話 狂犬騒乱

「あっぶないなー」
「あ、えろうすんまへん」
「投げるなら言ってよ」
 少年はむくれたが、思い出したように(ヘッド)に尋ねる。
「まだ死んでないよね?」
「は? はぁ、たぶん、死んでないと、思いますけど……」
 そこまで言って、(ヘッド)は唐突に怖くなった。どれだけ顔が凶暴であろうとも彼はまだ未成年で、人殺しの前科をつけるには若すぎる。
 急いで心臓の鼓動を確かめるために、大沢木の元へ行く。
 顔を近づけると、「ぺっ」頬に血に混じったツバを吐きかけられた。
 (ヘッド)は元の顔もわからないぼろ切れに一発を入れると、「生きとるようです!」と声をかける。
「じゃ、いいや。あとはボクがやっておくから」
 そう言うと、銃をぶら下げて大沢木へと近付く。身の危険を感じ、(ヘッド)は慌てて待避した。
「ケーサツだ−!!」
 誰かが叫んだ。
「何! ポリ公!?」
 いち早く(ヘッド)は反応し、仲間たちに指示を飛ばす。
「てめぇら! 逃げろ!
「待ちなよ。まだ終わって無いんだよ?」
「知るか! 俺たちは捕まりたくねーんだよ!」
「なんだよケーサツくらい。みんな殺しちゃえばイイじゃないか」
 その発言に(ヘッド)は一瞬目に恐怖の色を浮かべたが、急いで振り払うと一目散に逃げていった。
「ガキー」
 少年はぽつりと呟くと、めんどくさそうに銃を構える。
「……捕まるとパパとママが心配するかな」
 銃をおろすと、後ろ髪を引かれる様子で歩き出した。
 静寂。
 5分ほど経って、誰もいなくなったのを確認すると、日和は草むらから頭を突き出した。
「ケーサツだー」
 小声で言いつつ、急いで大沢木の元へ向かう。
「やはり、こうなりましたか」
 日和の出てきた草むらのほうから、あえかが顔を出す。
「いっちゃん! 大丈夫か!? しっかりしろよ!」
 助けおこす彼の目でさえ、とてもじゃないが友人が生きているとは思えなかった。
「くそ! オレって情けねえ! いっちゃんがやられてんのに、あいつ等逃げ出すまで怖くて震えてたなんて!! ほんと、情けねーよオレ!!」
 泣き声まじりに友人の名を叫び続ける春日に哀れみの目を向け、あえかは言った。
「……春日君。その子はもう」



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