「二二拍手

二話 狂犬騒乱

「ガキは黙っとけや」
「ふーん、そんなこと言うんだ」
 そういうと、銃口をちゃきりと頭に合わせる。
「撃つよ」 
 (ヘッド)は慌てて頭を低くした。
「う、嘘やがなァ。俺等の誰も、あんサンに逆らおうとはおもてまへん。お願いでっから、それひっこめてつかァさい」
「ボクの言うことを聞いたらね」
「わ、わかってますがな。ただ、こっちにも面子ってものがあるんでサァ」
「情けねぇ」
 大沢木の物言いに、(ヘッド)はまた勢いを取り戻すと、ずんずんと歩いて彼の前に立った。
「誰のせいでこんな真似してると思ってやがる」
「てめぇ等が弱いせえだろうが」
 ずむっ。
 傷口に拳がめり込む。
「ぐっ」とうめき、大沢木は片膝を付いた。赤い視界が濃さを増す。
「いい気味やの。そのまま地獄の底におち――べ!?」
 立ち上がりざまに蹴り上げた足が(ヘッド)の顎にクリーンヒットし、ついでにおしゃべりな口も閉じる。
「へっ、どうだ」
「……利かんのォ。全くきかん。腹に力がこもってねぇぜ」
 コキコキと首を回しながら、言葉通りに本人が起き上がる。
 くそ。
「とっととやっつけちゃってよ」
 少年は興味を無くしたようで、欠伸をしながら近くにあった小型の社の上に腰をかけている。
「さっさと次のステージに駒を進めたいんだ」
「? へ、へえ、そうすね? 野郎ども!」
 号令一下、顔の返送を取り払った暴走族の兵隊が押し寄せてきた。
 先手をとれたのは二、三発程度だろうか。
 一方的なリンチが始まった。
 大沢木は怪我でまともに動けず、三下どもにサンドバック同然に殴られる。蹴られる。
「おもしれー!」「なんだこいつ弱ェー!」「死ねオラ!」「生意気なんだよ!」「おまえが女ならのォ」「どしたオラァ!」
「そぉらよ!」
 最後に(ヘッド)がジャイアントスイングよろしくフルスイングで回転し、適当なタイミングで投げ捨てる。
「わっ!」
 少年が慌てて飛び退いた。
 ガタタタ!!
 小さな社が崩壊し、ボロ切れが一つ、転がる。



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