「二二拍手

二話 狂犬騒乱

「青春じゃ。これぞ青春じゃ」
「こ、ここここのハゲジジイ。殺すぞ!」
 顔を真っ赤にした大沢木が焦って手をひっこめると、臨戦態勢でハゲ頭の和尚を睨む。
「金剛サン、何でこんなとこいるんすか?」
「おまえの知り合いか!?」
 大沢木の声に、日和は「まぁ、一応」と言葉を濁す。
「まさか、会わせたい奴ってのは」
「違うから」
 日和は早とちりを速攻で否定した。
「今から師匠にしごかれにゆくのじゃろう?」
 金剛はすぐに涙を引っ込めると、懐から小さな紙切れを取り出し、日和に押しつけた。
「これを届けてくれ。ワシはもう少し、調べ物があるでの」
「はぁ、別にいいっすけど」
「では、頼んだぞ」
 そういうと、千鳥足でふらつきながら「南無…」と呟きチリンチリンと鈴のような音を響かせて去っていく。
 そして日和たちは気づいた。
 興味津々の観衆に取り囲まれている状況に顔を赤くし、二人はいそいそとその場をあとにした。




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