「二霊二拍手!」
二話 狂犬騒乱
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黄昏時を過ぎた町を、闇が覆い始める。まばゆいほどの輝きが地上から消え失せ、人間たちがかろうじて抗って灯す粗末な光だけが、彼らの周りだけを照らし出す。
それでも闇は出来る。
電柱の影。建物の裏。公園の木のうろ。光のない場所には闇が巣くう。誰にも知られずひっそりと、自分たちの領域はどこにでもあると。
「次は誰を殺そうかな?」
それはまだ、幼さの残る少年の声。
「ねぇ、次は誰がイイと思う?」
暗闇に包まれた学校の教室。教壇に腰掛けた少年が、二つの足をぷらぷらと降りながら誰かに話しかけている。
「むやみに殺すのは良くないと、教えたはずですが」
闇の奥から声が届いてくる。それは、優しげな男性の声だった。
「対象は、できるだけ点在させること。そして、証拠を残さないこと。それらの戒律にキミは違反している」
「一人だけだよ」
少年はぷぅと頬をふくらませてむくれた。
「しかも、わざわざ逃がした節がある」
「わかってないなぁ。レベル100の勇者が敵を狩るだけのゲームじゃ、すぐ飽きちゃうんだ」
少年は、体格に合わない重そうな銃を抱え上げ、お気に入りの玩具のそれをいじり回す。
「貴方にそれを渡したのは、遊びのためではありません」
暗闇の影はたしなめるように少年に声をかけた。
「その銃は古いものですが、特殊な呪法を施し、対象の魂を刈り取る強力な”勇者の剣”です。本来なら、貴方のような幼子がもてる代物ではないのですよ」
「ボクもう子供じゃないよ」
少年は一方向に向けて喋りかける。まるで、そちらに誰かがいるように。
だがその方向にはのっぺりとした闇があるだけだ。
「”人を殺す”ってのが大人への儀式なら、もう完了だよね」
無邪気に語る少年の顔は、月明かりに照らされて天使のように愛らしい。
「だから組織に入れてよ」
「弱りましたね」
「もう十人くらいは狩ったんだ。ボクもそちら側にいきたいな」
「それが残念なことに、貴方は1つミスを冒している。ノーミスクリアでなければ次のステージへの鍵は手に入らないのです」
「そうなの?」
「ええ」
「わかった! 次のターゲット」
教壇から飛び降りると、長い銃身を影に向ける。
「逃した奴。狩ることにするよ」
「大正解。良くできました」
影は手を叩いた。
「期待していますよ。貴方に神の、御加護があらんことを」
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