「二二拍手

二話 狂犬騒乱

「け、警察には」
「言ったさ。だが、素行不良のガキの戯言なんぞ、公僕連中は耳すらかさねえ。他に仕事があるんだ、とっとと帰れ、ってな。ああ、そういや大人はこんなんだったって、わかりきってたはずなのに。どいつもこいつも自分勝手で、俺たちみたいなつまはじきモンに冷たい目ェ向ける。なぁ、日和」
「な、なんで、俺に振るんだよ」
「くく……ま、そういうこった。分かったろ。偽善なんぞで手を貸すと、おまえだって死ぬかもしれねえ。おとなしく家に帰って――俺との付き合いなんか、キレイさっぱり忘れちまえ。それが、おまえのためだ」
 それで終わりだと、大沢木は金網から背を離し、一人で出口へ向かう。
「あ……」
 声をかけることをためらった日和は、扉が閉まるまで、何も言えずに固まっていた。




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