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「二二拍手

二話 狂犬騒乱

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「オレと同じ奴を捜している奴がいる」
 屋上に上がるなり、開口一番、大沢木は日和に告げた。
「おまえだろ。ひーちゃん」
「ああ」
 日和は頷いた。
 シケモクを取り出した大沢木は、ライターでなく小箱からマッチを取り出すと、それで火をつけた。
「余計なことはするな」
「なんでだよ」
 日和は鋭い目をした友人に、詰め寄った。
「そいつを捜してるんだろ? 協力させてくれよ」
「迷惑だ」
 端的に、だがはっきり断言し、大沢木は日和を否定する。
「これはオレの問題だ。おまえみたいなフツーのコウコウセイが出る幕じゃねえよ」
「オレは、いっちゃんを助けたいんだ!」
「何度も言わせるな」
 一度もこちらを向かない友人に、日和は我慢しきれず肩を掴む。
「こっち向いてくれよ! なんで手伝わせてくれねえんだよ!」
「そいつはな、俺の仇だ」
 肩を掴まれても微動だにせず、大沢木は遠くを見つめる。
「……俺のダチを殺した野郎だ」
「殺したって、ハハ、まさか、冗談だよね?」
「おまえに嘘は言わねえよ」
 すー…と、大沢木との距離が離れていく。目の前にある背中が、手を伸ばしても届かない距離にあるような気がした。
 掴んだ手をゆっくりと外し、大沢木は振り返る。
 なんで、そんな目でオレを見るんだよ、と春日は思った。
「南の中学に行ってから、少し荒れてよ。ほら、俺って片親しかいねえだろ? 馬鹿にする奴をタコ殴りにしたら、そこから真っ逆さまでよ。ついには、磯中の番まで張ってた。あんまり頭イイガッコウじゃなかったんで、サボって遊びも覚えた」
 金網に背を持たせ、話をする彼の目は、どこか空虚だった。
「そこで気の合う奴が出来た。同級の戸隠っつーワルでよ。いつもツルんで馬鹿ばっかりやってた。おまえみたいにさ。楽しい奴だったよ。一番の親友だった。これから先も、ずっとこの腐れ縁は続くんじゃねーかと、本気で思ってた」
 青空を見上げる。
「そいつがよ、殺されちまった。拳銃持ったガキに、目の前で。生身でどれだけ強かろーが、銃なんぞ持ち出されちゃ、かなわねえよな。翌日新聞ででかでかと載ったよ。”磯垣生、射殺される。暴力団の抗争に巻き込まれたか?”ハハッ、笑っちまった。くだらねー世の中だと思った」



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