「二二拍手

二話 狂犬騒乱

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 キーンコーンカーンコーン、と鐘が鳴る。
 今日一日の終わりだ。
 誰よりも早く、南雲美鈴は帰り支度を整えて出て行った。
 日和も帰る準備をしながら、大沢木の机の方を向く。
(どうしちまったんだろう、いっちゃん)
 昔は、自分と同じくらい気弱で、おとなしかった。中学は別々のところへ入学し、いつの間にか連絡すらしなくなってしまったが、今でも友達のつもりでいる。
 3年。
 長いのだろうか、短いのだろうかと考える。
 中学時代はそれなりに面白かったと思う。あっという間だったような気がする。彼女すら作ることは出来なかったが、結果最高の相手(予定)を今現在見つけている。背丈だって伸びた。友達も増えた。やりたいこともたくさんできた。有意義に過ごしたものだと思う。
 自分とは違う3年を、大沢木は経てきたのだろうか。
 いつの間にか出来てしまった溝に、日和は少し悲しくなった。




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