「二霊二拍手!」
二話 狂犬騒乱
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四時限目は体育の時間だった。
ぞろぞろと連れだって更衣室へと向かう女子と違い、男子は教室で着替える。体操服に着替えた日和は、学生服を着たまま教室を出て行く大沢木を見た。
志村たちに断わり、後をつけると屋上へと辿り着く。
ドアをあけて周りを見回しても、誰もいなかった。
「なんだ、ひーちゃんか」
上から声が聞こえる。
見上げると、屋上に設置された貯水タンクの上で、大沢木が手を挙げている。
「いつからストーカーが趣味になったんだ?」
「趣味じゃねー!」
タンクから飛び降りてくると、大沢木はポケットに手を突っ込んで歩いてくる。
「なぁ、なんかあったのか?」
「何が?」
教室にいるときはひどく声をかけづらかい雰囲気だったが、屋上には彼ら二人しかいない。大沢木の瞳は、昔見たような優しいまなざしに戻っていた。
「なんでそんな格好してるんだよ。真面目だったろ、おまえ」
「グレたんだよ。理由ならいろいろあるさ」
口にくわえたタバコを取り、灰を落とす。
「タバコ、やめとけよ。心臓に悪いぞ」
「肺に悪いんだよ」
苦笑して、大沢木は友人の忠告通りにタバコの火を指ですり潰して消した。吸い殻はポケットに入れる。
「熱くないのか?」
「昔からこうさ。シケモクって言ってさ、こうしておくと、あとでまた吸える」
「なぁ、何があったんだよ」
日和の質問に、大沢木は屋上の落下避けの金網に取りつき、外を見た。木に覆われた水蛭子山が見える。
「……3年、か。南雲も、変わってなかった。昔から、アイツおまえと喧嘩ばっかしてたな」
「はぐらかすなよ」
「悪い。ひーちゃんと話してると、決心が鈍る」
大沢木は外を向いたまま、日和に言った。
「決心? 何の?」
「…………」
向けられた目は、”狂犬”の目ツキだった。
「ひーちゃん。知り合いに、中坊で、拳銃を玩具にしている奴はいねぇか?」
「いねぇよそんなの! アブねえじゃん」
「モデルガンを集めてる奴でもいい」
「軍事オタクの知り合いは、いない、なぁ」
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