「二二拍手

一話 少女霊椅譚

「わたしは昔から、ヘンなものばかり引きつける。みんな気味悪がって去っていった。だから今は、友達だって一人もいない。無意味な毎日から、ようやくやりがいのある毎日に変わってうれしかった。夢みたいだった」
「みすず」
「でも、今日でもう終わり。夢から覚めたみたい。ありがとう、笹岡さん」
 微笑む少女の顔を見て、笹岡は決心した。
「そんなことはない! 美倉みすずはまだまだこれからだ! 幽霊だろうが妖怪だろうが、みすずのためならいくらでも受け付けてやる! そうだ。霊能タレントというのはどうだろう? 新ジャンルだ! アイドルの新境地(しんきょうち)だぞ! 俺が売る! 俺が売り出してやる! みすずの人生は、まだまだこれからだ!」
 野望に燃える若き敏腕(びんわん)マネージャーは、そのタマゴの手をしっかりとにぎりしめた。
「これからも頑張(がんば)ろうな、みすず!」
 少女の目からこぼれ落ちる涙を見て、あえかはまたお茶を口に運ぶ。少しだけ苦いと思ったが、この(しぶ)みが日本茶の(うま)さだ。
 顔をあげると、笹岡が身を乗りだしてきている。
「な、なにか?」
「そうと決まれば、相談があるのですが」
 (ことわ)りづらい雰囲気に、あえかは思わず(うなず)いてしまった。




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