「二霊二拍手!」
一話 少女霊椅譚
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次の日は遅刻した。
やはり体力的に消耗していたらしい。
学校に着くと、すでに一時間目の授業は終わっていた。数学の授業だったので、日和的には問題ナシング。
「よっ、おはよー!」
「おっ、遅刻魔」
「来たな遅刻魔」
「わるいかよ」
志村は新しい『スランプ』を手にしている。
「買ったのか?」
「キミの友情のおかげさマイフレンド!」
抱きつこうとする志村をかわし、自分の席にうすっぺらい鞄を置く。基本彼は置き勉で、ほとんどの教科書はすべて机のなかに詰めこんである。
鞄を持ってくるのは、たまに朝校門に出没する進路指導の岡田対策だった。
「昨日はたっぷり”みっちー”で楽しんだぜ」
「なにをだ」
「聞くんじゃねえよ」
友人たちと笑いあったあと、ふと、気になって委員長の席を見る。
「あれ。今日委員長休みなんだ」
「ああ。また、家庭の用事かなんかじゃねえの?」
委員長は日和よりもよく学校を休む。見かけまじめでサボり癖なんかなさそうだが、ある日は体調不良だとか、別の日は家庭の用事だとかでいろいろ理由をつけては休み、自分よりも実は悪なんじゃないかと日和は怪しんでいたりする。学校側も特に問題にはしていないようで、ひょっとすると本当に体調不良なのかもしれない。
だがそのせいで、友達ができないのもひとつの要因だろう。
「あいつの家って、そんなに毎週イベントあんの?」
「さぁー。おまえが知らないってことは、誰も知らないんじゃね?」
地図上日和の家は、クラスの中では一番南雲美鈴の実家に近いため、急な連絡事項やプリントの配達をたのまれる。
近いと言っても、1キロは離れているというのに。
「まじかよ。またオレ、あいつん家にいかされんの? 自転車だって壊れてんのに……はっ!!」
「どうした?」
「便所か? つきあうぞ」
「ちがう! オレのチャリ、昨日置き捨てたままじゃん!?」
追われている少女を助ける際に、自分の自転車は道路のわきに蹴転がしてそれ以降見向きもしていない。
「やべえ! かなり忘れてた!!」
「あーあ、今ごろ粗大ゴミ行き確実だな」
「木曜は粗大ゴミの日なんだぜ?」
ためにもならない知識を披露する御堂を無視し、鞄を手に取るとドアへと走る。
「今から取りに行ってくる!」
「またサボり?」
「親戚の葬式!」
「その理由一回使ってんぞ!」
「適当な理由たのむ!」
そう言い残し、日和は休み時間のうちにぬけ出せるかどうかが勝負だと走った。
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