「二二拍手

一話 少女霊椅譚

「これ、おまえの仕業か?」
 破けた”みっちー”の巻頭カラーが、セロテープでつぎはぎされていた。
 委員長が返してくれてから今まで、日和は中身を読んではいない。だとすれば、考えられる要素は一つしかなかった。
「手間かけてくれたのは嬉しいけどよ、これじゃコレクションには加えられねえよ」
 あいつ、思ったよりいい奴じゃん。
 日和はすこしだけ委員長を見直し、「じゃ、オレがもらうよ」と言った。
 にょきりと手のひらが伸びてきた。
「200円」
「はい?」
「まだ読んでないんだろ? おれはコイツをおまえに売って軍資金にしたいんだ。友情のために買ってくれるよな?」
「……せめて半額に負けろ」
「いやだ。『スランプ』に足りねえじゃん」
 しぶしぶ残り少ないこづかいのなかから硬貨2枚を取りだし、志村の手のひらに押しつけた。
「まいどー」
「あほか」
 つぎはぎだらけの『スランプ』を手に取ると、日和は学生鞄のなかにつっこんだ。
「おつとめがんばれよー!」
 笑いあう友人たちの声を背に、帰宅部の日和は彼個人だけの部活動の場所へ急いだ。




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