「二二拍手

一話 少女霊椅譚

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「ヒヨリ、ずりーぞ!」
「てめー」
「この裏切り者ぉ!」
 志村たちは放課後の帰りの会にまでつるし上げられ、クラス全員のまえで「もうしません」と半泣きになりながら証文まで書かされていた。
 いまだにクラスの女子からの視線が痛い。
「まぁまぁ」
「パン買うのにどれだけかかけてんだよ! おかげで昼飯まで食えなかったじゃんか」
「悪ィ悪ィ」
 昼食食えなかったのは別の要因だったと思うが、と日和は手を突きだし半笑いする。
 日和はパンと一緒に委員長から返してもらった『スランプ』を差し出す。
「おまえこれどこから!?」
 おおげさにおどろく友人たちに、日和は「うーん……」とうなった。
 つき刺さるような視線を感じる。
「拾った」
「拾ったって、委員長のやつ、捨てやがったのか?」
「おれたちに散々頭下げさせて自分のほうがワルモノじゃねぇか!」
「奴は鬼だ!」
 ぎゃーすか騒ぐ友人たちから目をはなし、委員長の席を見ると、しっかり目が合う。
 つん、と視線をそらし、委員長は帰り支度を済ませると、誰よりも早く帰っていく。
「態度悪いやつ」
「なぁ、ヒヨリ、ホントに捨ててあったのか?」
 (たず)ねてくる志村に、日和は半分だけ真実を告げる。
「返してくれたんだよ。委員長が」
「マジで!?」
「ああ、マジで」
「「嘘つき!」」
「なんだよ!」
 全員から押しつけられた指を一つ一つ払い落とし、日和は憮然(ぶぜん)と腕を組む。
「オレだっていろいろ考えたんだぞ!」
「素直に返してくれたんならわざわざウソつくことねーじゃねえか」
「それには……具体的に言えない理由があるんだよ」
 なんとなくだが、委員長の前で本当のことを言うのはためらわれた。
「朝の仕返しか?」
「ヒヨリって案外ねちっこいのな」
「そんなんじゃねえよ」
「ああ、でもよーオレのみっちーは戻ってこねえ」
 志村が表紙を開くと、不思議な顔をした。
「どうした?」



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