「二二拍手

一話 少女霊椅譚

「昼休みはまだあるぜ? 志村の奴にはだまっててやるから読んじまえよ」
 どうせこいつの机の中ものぞかれてるだろうし、それで痛みわけって事になる。
「いらないわよ!」
「む。なんでそんなにへそ曲がりなんだよ。本当に友達できねえぞ」
「あんたには関係ない!」
 べしっ! と分厚いページの束で額を叩かれ、「いてぇ!」と叫んで飛び上がる。
「痛てえじゃねえか!」
「そんな低俗な本なんて読まないもん!」
 委員長は捨てぜりふを()くと、日和に『スランプ』を押しつけて去っていった。
「なんだよくそっ、なんで俺ばっか」
 日和は愚痴(ぐち)りつつ、本をひらいて中身を見る。
「”みっちー”ねえ」
 そこには肌もあらわな水着姿で愛想を振りまくアイドルの笑顔がはじけている。
「どうせなら委員長も、このくらい笑やいいのに」
 ぺージを閉じると、教室の作戦が不発に終わっている友人たちへの手土産を持参して、教室へとむかった。

 教室へもどると、志村たちがクラスの女子から責められていた。
 どうやら待ちきれずに作戦を決行し、南雲美鈴のつくえを探っていたところを見事発見され、最悪な事態にまで発展したらしい。
 かわいそうな奴らだ、と日和は思った。『スランプ』は放課後に渡すことにしよう。




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