「二二拍手

一話 少女霊椅譚

 あのとき、誰か一人でも友達がいれば、そんな思いにとらわれることはなかったのかもしれない。
 今この場で笑いあう友人たちをみて、日和はそう思った。
「おっ、席を立ったぜ」
「あれ? あいつ弁当派じゃなかったっけ?」
「忘れたんじゃねえの?」
「いいからさっさと回収しようぜ」
「悪ィ、オレ、パン買ってくる」
 軽く手を挙げた日和に、友人たちは「カレー」「焼きそば」「俺も」と注文をだした。
「わーかったわかった」
 (のぞ)みの昼食を告げると、彼らはクラスの女子にどう気づかれずに委員長の机から『スランプ』を手にいれるか作戦を()りはじめる。
 日和はポケットから小銭(こぜに)入れをとりだすと、一〇〇円玉を数えてなんとかなると踏んだ。
「はやく帰ってこいよ」
 友人たちに見送られ、日和は教室をでて購買部へ走った。




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