「二霊二拍手!」
一話 少女霊椅譚
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結局、四時限目まで委員長は席を立つことはなかった。今日は教室移動のある授業もなく、「こっそり強奪」計画は昼休みまで頓挫する。
「ナメてたぜ。やつの友達づきあいのなさを」
苦々しくつぶやく御堂の言葉に、日和も含めたみんながうなずく。
休み時間のあいだ中、ずっと見張っていた結論だった。
休憩がはじまると同時に、クラスメイトは自分たちの趣味にあうグループをつくり、楽しそうに談笑をはじめる。それは小学校からつづいてきた習慣みたいなモノで、グループにはかならずリーダー格の人間がいて、その生徒のもとに自然とあつまる。話題はきのう見たテレビのことだったり、発売したばかりのゲームについてだったり、プロレスだったり、こそこそと話している女子の連中は、たがいに好きな男子の腹のさぐり合いだったりする。そのグループの構成はほぼ一学期の中頃までには決まっていて、そこに混じりきれなかった生徒は、誰にも話しかけられることなく、ながく感じる休み時間をずっと耐えなければならない。
彼女もどうやらその一人のようだった。どこのグループにもくわわることなく、ひとりつまらなそうな顔をして黄色いブックカバーをつけた本をながめている。
「……なんか、かわいそうだな」
ぽつりとつぶやいた志村の言葉に、御堂があきれる。
「『スランプ』とられたくせに、同情なんかするなよ」
「それとこれとは別だろ。あの女があんな性格になったのって、あのせいじゃね?」
「かもな」
すんなり答えた日和に、御堂がからかい混じりに話す。
「嫌ってるわりには、わかったふうな口を聞くじゃないか。春日くん」
「ひとりってのはつらいモンだぜ? 助けてほしくても誰に声をかけていいかわからないからな。だから、自分より上の大人にたよっちまう」
「へー」
「めずらしいな。ヒヨリにしちゃまともなこと言ってる」
「うっせえよ」
友人たちのからかいの声に、ふと子供の頃の思い出が頭をよぎる。
体の弱かった自分は、一日中を寝てすごした。近所の子が一回りおおきなランドセルを背負ってたのしそうに学校へ出かけるのを、布団のなかでじっと息を殺してとおり過ぎるのを待った。
あの頃、笑い声というものはひどく耳ざわりなものだった。
彼らはあんなに元気なのに、どうして自分だけこんなありさまなのだろう。そんな思いに駆られて無理矢理起き上がろうとすれば、引きつるように胸の鼓動が早まり、ひどい喘息で気をうしなう。
気づいたらまた布団のなかだ。
なさけなさとともに、あらがいようのないなにかとてつもなくおおきなモノが、自分の人生の行くすえをふさいでいる。
そんな気がして、生きることに消極的になっていった。
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