「二霊二拍手!」
一話 少女霊椅譚
「うんにゃ、まだ」
「じゃ見せてやる」
といって、志村は満面の笑みを浮かべて机の中から今週号の『スランプ』を大事そうにつくえにおいた。
「今週号の特集」
表紙に手のひらで隠したまま、志村はにやついた目つきで日和を見上げる。
「誰だと思うよ?」
「誰だよ」
「まぁ慌てるな」
「おまえが見せるっつったんじゃねえか」
『スランプ』は少年向け雑誌だが、毎回表紙を開くと若手女性タレントや人気アイドルのグラビア写真にカラーページをさいている。大胆なポーズでの水着写真や日常の一コマを切り取った素顔の一瞬は、健全な青少年にとっては何より変えがたい宝物と言える。
とくにこの志村は、そういうグラビアページを切り取って集めているコレクター趣味の変態だ。
「聞いておどろけ。なんとあのッ――」
「志村くん」
びくうっ、とわかりやすいビビリようで、全員が肩をちぢめる。
振り返った日和の目に、ギラリと銀ぶちの眼鏡をきらめかせて彼らをにらむ女生徒の姿がある。
「やべぇ、委員長だ」
「学校にそんなモノ、持ってきていいと思っているのですか?」
冷たい目をかがやかせて近づいてくる女生徒に、あわてて志村が『スランプ』を机に引っこめようとする。
――ばんっ!
びりりッ。
間に合わなかった。
「ああぁぁぁ、俺のみっちー……」
ぴくりと表情を引きつらせ、しわくちゃになった表紙を見下ろす少女。
反対側で志村はぐちゃぐちゃになった本の表紙を、絶望的なまなざしで見下ろしている。
「こんなところでこんなものを、持ってくるほうが悪いんです」
「そりゃないよ委員長!」
抗議の声を上げた御堂が、委員長と呼ばれた少女のひとにらみで押しだまる。
「わたし、間違ったこと言っていますか?」
説得力のかたまりのような言葉を投げつけられ、仲間はなにも言い返せなくなる。
「そのくらいにしろよ、委員長」
「わたしは委員長じゃありません。南雲という名字があります」
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