「二霊二拍手!」
一話 少女霊椅譚
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「おはよう諸君!」
教室に入るなり、春日日和は元気よく挨拶する。
気づいた何人かが適当な挨拶を返してくる。それにいちいち挨拶で答え、上機嫌に自分の机へと向かう。
「ヒヨリ! ちょっと来いよ」
席に着く前に声をかけられた。
声をかけた男子生徒の周りには、見慣れた顔が取り巻いている。
「よぅ志村。おはよう!」
「いいからよ、ちょっと……っておわっ、また怪我してんの?」
「フフン、いいだろ」
得意そうにほほをなでる日和に、クラスメイトはあきれた顔を見せた。
「また例の『朝練』か?」
「まぁね。高尚な武術の特訓さ」
「いったいどんな特訓してるんだよ」
「そりゃ」
言葉に出そうとして、日和は少し考えた。
「――そこにチチがあるからさ」
「ワケわかんねえし」
「まだねらってんの? ”鳴神坂の巫女様”」
志村のつくえに腰掛けている御堂という少年がたずねる。
「やめとけよ。ずっと年上じゃん」
「おまえらなにもわかっちゃいない」
日和は制服のえりを正すと、びしっ! と親指を自分に向けてつきだした。
「オレと師匠は今、同じ屋根の下でともに武術を極めるというひとつの目標に向けて歩んでいる。門下生はオレただひとり。ひたむきに汗を流すオレ。日々成長していく教え子を見守る師匠。月日をかさね、次第にカッコよく一人前の男として磨きあげられていくその姿にやがて師匠と弟子という垣根を越え禁断の関係へと」
「一人前の男っておまえ、いつまで弟子でいるつもりだよ」
「一生」
「一生!?」
はははっ! と爆笑。
「あんだよ」
「おまえ、弟子ってさ、いつか師匠を越えていくモンだろ? 一生弟子っておまえ、そんなんじゃいつ一人前の男になるんだよ」
「バカヤロー! 越えちまったら一緒にいられないだろうが!」
日和にとっては弟子でいることのほうが重要なのだ。
「つーか無理だろ。相手はここらじゃ最強の男ぎらいじゃん」
「ああ、知ってる知ってる。空手部の先輩が商店街で見かけて声かけたらぶん投げられたってよ」
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