洛陽の花 <短編集>

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 白い息に足を止める。
 紅葉を見なくなったかと思えば、木枯らしが身にこたえる季節になった。
 見上げると、西へ沈む夕暮れが遠く、空を赤銅色にかすませて街並みに沈んでいく。
 毎日の繰り返しの中で、何度見たか知れない光景は、いつの日でも、昔の暖かな日々を思い出しては消えていく。
 そのたびに思うのだ。
 時は、否応なく過ぎ去っていくのだと。




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