「ファウスト〜殺戮の堕天使〜」
七章 悪魔の夜
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ファウスト
「ごめんなさい」
どうして謝っているんだろう。
「もう、後戻りはできないの」
寝台に静かに横たわる少女の頬をなでて、その体温を感じる。
後悔なんて今さら。
失うものなんてなにもない。
あれから二年。
ようやく失ったものをとりかえせる。
「あなたでは、駄目なの…」
ごめんなさい。
「許してね。ニーナ」
限りなくやさしく、彼女は呟いた。
「私にはあの子しか――サラしか見えないの」
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