「ファウスト〜殺戮の堕天使〜」

六章 支配者は語る

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ファウスト

 記憶に埋もれた残滓を掬って過去と呼ぶ。

 明日という幻想を抱いて迎える朝を未来と呼ぶ。

 地べたを這っている今から目をそらし、思い出と希望に浸って生きることは楽だろう。腹が空いても幻想の中であればたらふく食える。希望さえあれば、胸を張って生きていける。

 戯れ言だ。

 幻で腹は膨れない。夢で生きる糧は手に入らない。必要なのは、現在をどう生きるかの選択だ。未来も過去も存在しない。経験という唯一無二の実績と、そこから導き出されるべき予測。そして、決断するための意志。

 強固な意志こそが、今を生きるための最大の武器なのだ。

 




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