「ファウスト〜殺戮の堕天使〜」

五章 神の奴隷

/ 1 /

ファウスト

 夢と(うつつ)に境界など存在しない。

 その現実に生きている限り、それは夢とはいえない。満たされぬままに飢えを覚え、ひりつく喉に水を求め、骨と皮だけになろうが生きている。目が覚めぬうちに、どうして夢だといえようか。

 力つき、倒れて目を閉じ、開けた先が現となる。

 人はそれを毎日繰り返している。明くる日も、明くる日も、数えきれぬほど無限に繰り返し、夢と現を交互に巡る。

 今が夢でないと、どうして言えようか。

 




Copyright (C) 2009 Sesyuu Fujta All rights reserved.