「ファウスト〜殺戮の堕天使〜」

二章 マグダラのマリア

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ファウスト

 人は光を求める。

 それは群れた蛾のようだ。日の落ちた深い闇に、一つ、二つ灯った明かりに惹かれて、灼かれて落ちてゆく小さな虫けら。それでも、彼らは求めることをやめない。暖かい火の中に身を投じることで、一瞬でも憂き世のつらさを忘れようとする。

 彼らは総じて言うだろう。現実などどこにあると。

 閉じた目では幻しか見えない。塞いだ耳では幻聴しか聞こえない。腕を伸ばしたところで、それは夢の中でしかない。

 それでも彼らは望むだろう。毒のある花に囲まれていることが幸せなのだと。

 花たちは笑う。華やかな宴と甘い香りに誘われた、愚かな虫の末路を。

 




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