「-HOUND DOG- #echoes.」
プロローグ
スコン。 鉄板一枚に穴が空く。 それだけだった。 「……やっぱ無理か」 硝煙を上げる銃口を振り、再び駆け出す。 ガシャン、ガシャン! 二つの足が押しつぶそうと頭上から交互に降ってくる。そのたびに砂埃が舞い上がり、整備された地面をへこませていく。 踏みつけてきた足にリズムを合わせ、タイミングよく突起に手をかける。 振りあげた勢いに乗り、手を放すと大きく舞い上がった。 目の前に指名手配犯の顔がある。 プラスティック張りのパイロットルームに足をかけ、重心を固定してM500Hの引き金を引く。 ズゴン。 強化プラスティックに穴が空く。 「 ズゴン。 手を出そうとしたレバーが弾けて飛んだ。 ズゴン。 怪しい動きをした右肩をかすらせる。 ズゴン。 ペダルを踏もうとしたので壊してやった。 「次はなんだ?」 逆光が顔を影で覆い隠し、くっきりと筋の通った険しい輪郭だけが男の目に入る。 脱獄囚はパイロットデッキで諸手を挙げた。 「第九八条『加重逃走』、および第九五条『公務執行妨害』、第二三六条『強盗』その他もろもろの罪により貴様を逮捕する」 銃の引き金を引く。 身をすくませてびびる男。 カキン。 「空っぽだ」 以上を踏まえ、俺が出した結論はこうだ。 生身のままで奴らと渡り合うには、タフネスでないと話にならない。 回転式の弾倉から黄金の薬莢をばらまく。 伴奏のように弾ける音色はよりいっそう、男の恐怖感をあおったようだ。 擦り切れるほど両手をすり合わせ、懇願してくる。 幸せな奴らだ。 謝れば済む、その根性が染み付いてやがる。 パイロットルームを蹴りつける。わかりやすいように何度も蹴りつけるとようやく鈍い頭で意図を理解したようだ。 手錠を放り投げると、顎で行動を示してやる。 その額に穴を開けられないのが残念だ。 |