「二二拍手 巻之二」

序章、あるいは呪い唄

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 神さまなんてキライ。うそつきだから。

 おなかがへって泣きたいときも。
 さむくてこごえて消えてしまいそうな夜も。
 いたい思いをじっとガマンしてなくちゃならないあいだも。
 どんなにお祈りしても、助けてくれなかった。
 お祈りがたりないの?
 どれだけお願いすればたすけてくれたの?

 ただ、おなかいっぱいに食べることができて、
 あたたかいベッドでぬくもりを感じて、
 だんろのあるへやで、笑いあっていたかったのに。
 窓からみたけしきの内側にあこがれただけなのに。

 神父さまの言うとおりに、まいにちお祈りをささげました。
 つぎはげぎだらけのぼろを着て、
 いっしょうけんめいにお祈りしても、
 奇跡なんておきなくて。

 顔をあげても、ただ笑ってみてるだけ。
 なにがそんなにおかしいの?
 あたしが苦しんでることがそんなにたのしいの?

 神父さまは言ってたのに。
 とおいお空のうえから降りてきて、パンを与えてくれるんでしょ。
 どんなにおかしな味でも、いっしょうけんめい食べるから。
 ひとつだけなら、おとうとと半分こして食べるから。

 かえして。
 おとうとを、かえして。
 あれだけおねがいしたでしょ。
 眠らずずっとおねがいしたでしょ。
 きのうから目をあけないの。
 ずっととじたまま。
 もう「おねえちゃん」とよんでくれないの。

 どうして。
 ねぇ、どうして?




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