「二二拍手

第五話 ヤミヨミの神父

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 チチチ…
 チチチチ……
 雀の声。
 今日もまた、柔らかくオレの頬へと注いでくる。
 ああ、朝だ。
 眠い。
 もう五分寝ていよう。
「春日君」
 体が揺すられる。
 うーん、誰だ。人の安眠を妨害するのは。そう言う奴は馬に蹴られて死んじまえ。
「朝ですよ」
 そんなことは分かっている。
 なぜ人間は朝だからといって起きなければならないのだ。
 早起きしたからといって何か得があるのか。早起きは三文の得だと。
 嘘つくんじゃねー! オレが今まで早起きして得したことなぞ一度もないわ! 早起きの目的なんざせいぜい小学生の頃に8:00からやってた戦隊ものを欠かさずみたことくらいだ! ガキレンジャー最高っ!
「起きなさい」
 むむむ。
 今日はなんだかしつこいな。オレは低血圧なのだ。つまり朝に弱く、夜にも弱い。人間の活動時間の二分の一くらいがオレの睡眠時間に当たると言っても過言ではない。寝る子は育つ。オレはまだ背が伸びたい。むにゃむにゃ…
「春日君」
 ぶちっ。
「うるさいわーー!!」
 オレは布団を跳ね上げ、快適な睡眠時間を削ろうとする悪魔に向けて怒鳴りつけた。
「おはようございます」
 天使が微笑む。
 やばい。
 ここは天国か?
 なんだこの美しい笑顔は。
 輝いている。天上の花のように。白いエプロンが目に眩しい。太陽なんかこの輝きに比べればチンケな蛍光灯の灯りだ。コンビニとかで蒼白く光ってバチバチ虫を殺してるあのレベルだ。この笑顔は世界を救う。
「ご飯が出来ましたよ」
「ご飯」
「はい」
 ご飯が出来ていると天使はいう。
 目の錯覚か?



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