「二二拍手

第四話 式神演舞

「金剛様、まだわかりません」
 あえかは気を落とした和尚に向け、声をかける。
「青龍家では、無いかもしれません」
「う、うむ。そうじゃな。あそこの馬鹿ガキが単独で先走ったのかもしれん」
 そういうと、再び立ち上がって縁側へ向かう。
「直接たずねてくる」
「お一人で危険では……」
「ワシは不動金剛明王。もしそうなら返りうちにしてくれる」
 仁王のような顔を憤怒で固めた和尚は、荒々しくバスケットシューズを履くと、裾を捲り上げて恐ろしい速さで闇に消えた。
 取り残される3人。
 一人は重傷だった。
「……大沢木君」
「帰れっつーなら、言うことはきけねえな」
 大沢木は鋭い目で師を睨んだ。
「わかりました。この件が解決するまでは、ここにいて構いません」
「感謝するぜ。それと」
 大沢木は(マット)に沈んでいる親友を見て、続ける。
「こいつも、同じでいいよな」
 あえかは少しだけ眉をひそめた後、「ええ」とうなずいた。



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