「二二拍手

序 それは天上の花のような――

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 チチチ。

 チチチ。

 朝を告げるすずめの声。
 やわらかく差しこんでくる()の光。
 四角く背伸びしながら、まぶしい光がいくつも伸びている。
 等間隔に1、2、3、4……窓の数だけ光があふれる。5、6、7、8……全部で八つ。いや、逆もいれると倍だから16。

「…………」

 かぐわしい朝のにおい。
 ()え間なく()りかえされようとする一日のはじまり。
 人間という存在が知恵を手に入れてから今日まで、いくつこの光景を目にしたのだろう。
 朝と夜が繰りかえされて一日となり、それが365回繰りかえされると一年となり、現代の平均寿命は80ウン歳だという話だから一生に生きて見ることのできる朝の景色は365×約80イコール……

「…………」

 そういえばオレは数学がきらいだ。
 なんだって昔の学者はあんな無意味なものをカリキュラムにくわえやがったんだろう。
 あんなもの大人になって本当に必要になるんだろうか。

 はなはだ疑問だ。

 別にはじめて赤点をとったのが数学だったから憎いワケじゃない。
 確かにあれがケチのつけはじめではあることは事実だが、もっと他にタメになる学科というものがあるのじゃないだろうか。

 そう、たとえばだ。

 人間が人間として生きていくために最大限活用されるべき科目、それはもちろん。

 

保健体育だ。



 昨今風紀のみだれが(いちじる)しいからな。



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