「キラー・ハンズ」
.第三話
著者 藤田拙修
Staday,
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――ドンドンドンドン! ――あいつを殺して! お金ならいくらでもはらうから! 「……ふあ、ねむ」 「夜中の二時」 「丑三つ刻、ね」 ――ドンドンドンドン! 「そういや、近くに神社があったっけ」 「古くてボロっちい小屋みたいな」 「うっそうとした木に囲まれた場所」 「あそこ、繁盛してたなあ」 ――ドンドンドンドン! 「うるさいなあ」 「たまにいるんだよね、こうゆうひと」 「言葉を解釈をはき違えて来る奴」 「迷惑なんだよ」 「こっちの領分じゃあ、ないだろうが」 「何の用ですか?」 「…………」 「とぼけてなんかいませんよ」 「ここは他人の命を奪う場所じゃない」 「…………」 「嘘をついてもいませんよ」 「ぼくは捕まりたくありません」 「…………」 「どうにも」 「憎しみにとらわれた人間ってのは、聞き分けがない」 「それだけ憎いなら、自分の手を汚せばいいのに」 「何でも人のせいにして押しつければ」 「きれいなままでうそぶいていられると、馬鹿な勘違いをしている」 「自分だけ天国にいけるなんて」 「都合が良すぎるんだよ、下衆が」 「二つある穴のどちらが大きいかなんて」 「わかりゃしねえだろうが、呆けが」 ――ドンドンドンドン! 「もう、しつこいなぁ」 「…………」 「そうだ」 「お客さん、店間違えてるよ」 「殺し屋さんは、右二つ隣」 「ここじゃない」 ………… 「…………」 ――コツコツコツ 「通報されるかな、あのひと」 「ま、安眠妨害のつぐないだね」 「恨み辛みなんてのは、ほっとけば治る風邪みたいなものだ」 「日常というぬるま湯に浸かっていれば」 「おのずと消える穢れのひとつ」 「――でも」 「それでも消えない人たちが」 「夜中の、あの神社の世話になるんだろう」 「むごたらしく打ちつけられた膨大な数の人形」 「憎しみを形に変えて、ぶつける怨霊の器」 「それでも飽き足りなければ」 「…………」 「さて」 「イチゴ牛乳でも飲んで寝よ」 「明日は、来客があるかもしれないしね」 (END) |