「キラー・ハンズ」

      .第三話

 

 

 

 

 

       著者 藤田拙修

                                                  Staday, December 30, 2006

 

 

 

 

 

 


――ドンドンドンドン!

――あいつを殺して! お金ならいくらでもはらうから!

「……ふあ、ねむ」

「夜中の二時」

「丑三つ刻、ね」

――ドンドンドンドン!

「そういや、近くに神社があったっけ

「古くてボロっちい小屋みたいな」

「うっそうとした木に囲まれた場所」

「あそこ、繁盛してたなあ

――ドンドンドンドン!

「うるさいなあ」

「たまにいるだよね、こうゆうひと」

「言葉解釈はき違えて来る奴」

「迷惑なんだよ」

「こっちの領分じゃあ、ないだろうが」

「何の用ですか?」

「…………」

「とぼけてなんかいませんよ」

「ここは他人の命を奪う場所じゃない」

「…………」

「嘘をついてもいませんよ」

「ぼくは捕まりたくありません」

「…………」

「どうにも」

「憎しみにとらわれた人間ってのは、聞き分けがない」

「それだけ憎いなら、自分の手を汚せばいいのに」

「何でも人のせいにして押しつければ」

「きれいなままでうそぶいていられると、馬鹿な勘違いをしている」

「自分だけ天国にいけるなんて」

「都合が良すぎるだよ、下衆が」

「二つある穴のどちらが大きいかなんて」

わかりゃしねえだろうが、呆けが」

――ドンドンドンドン!

「もう、しつこいなぁ」

「…………」

「そうだ」

「お客さん、店間違えてるよ

「殺し屋さんは、右二つ隣」

「ここじゃない」

…………

「…………」

――コツコツコツ

「通報されるかな、あのひと」

「ま、安眠妨害のつぐないだね」

「恨み辛みなんてのは、ほっとけば治る風邪みたいなものだ」

「日常というぬるま湯に浸かっていれば」

「おのずと消える穢れのひとつ」

「――でも」

「それでも消えない人たちが」

「夜中の、あの神社の世話になるだろう」

「むごたらしく打ちつけられた膨大な数の人形(ひとかた)

「憎しみを形に変えて、ぶつける怨霊の器」

「それでも飽き足りなければ」

「…………」

「さて」

「イチゴ牛乳でも飲んで寝よ」

「明日は、来客があるかもしれないしね」

END




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