「二二拍手

一話 少女霊椅譚

「おい、大丈夫か!」
 あわてて駆け寄る日和。
 少女は顔をあげるなり、悲鳴をあげて逃げだした。
「ちょ、待て! ちゃんと説明しろ!!」
 そんなにオレの顔はひどいのか!?
 愕然(がくぜん)と自信喪失している彼の前で、不思議な現象が生じた。電柱の影がぐにゃりと立ち上がり、人の形をとると、足音もさせず少女を追いかけだした。
「あいつ……!」
 日和にもわかる。だてに霊感が飛びぬけて高いワケじゃない。
 邪霊に追われてやがる!
 少女が角を曲がるのを見ると、自転車をほうりだして走り出す。足には自身がある。だが、あの黒い影の横を突っ切れるほどの勇気はない。
 頭のなかに広げた地図から、最短距離を割りだす。
 かけだした彼は、物置の裏を突っ切り、はずれた木の(へい)を蹴りあげ、クサリでつながれた犬の射程圏外を駆けぬける。
 ものの十分もしないうちに、ばったりと少女に出くわした。

「きゃあああああ!!」



 今度は本当におどろきの悲鳴をあげ、後じさろうとする少女の手を強引につかむ。
「助けてやる。ありがたく思え!」
 腕をひっぱると、少女は素直に従ってついてきた。
 言った後で、日和は後悔していた。
 どうやって助けりゃいいんだ?




Copyright (C) 2014 にゃん翁 All rights reserved.